「ねえ、聞いて聞いて!このかたつむり、実は魔法がかかっているんだって!」 友達のユウキが興奮気味に話してくる。私たちは学校の帰り道、公園のベンチで休憩していた。 「え、本当に?どういうこと?」 私は興味津々でユウキの話を聞いた。彼はいつも何か新しいことを知っていて、驚かせてくれる存在だ。 「このかたつむりは、見つけた人に願いを叶える魔法をかけるんだって。たとえば、君が『明日は晴れてほしい』って思ったら、かたつむりに触れて願えば、きっと叶うんだよ」 ユウキはかたつむりを手に取り、優しく撫でる。かたつむりは小さく身を縮め、そのままユウキの手の中でじっとしている。 「本当に信じられるの?」 私は半信半疑でユウキを見つめた。魔法なんて本当に存在するのだろうか。 「信じるか信じないかは君次第だけど、私はこのかたつむりの魔法を信じてるよ。実際に何度か願いを叶えてもらったことがあるんだ。君も試してみない?」 ユウキの言葉に心が揺れる。私はいつも晴れた日に元気をもらっているし、このまま信じてみるのも悪くないかもしれないと思った。 「じゃあ、私も試してみるよ。何を願おうかな…」 私はかたつむりを見つめながら考え込む。何か特別な願い事をするべきだろうか、と思っていたが、その瞬間、ふと思いついた。 「私、将来は小説家になりたいんだ。だから、このかたつむりの魔法で、いつか一冊の本を出版できるように願いたい」 私の願いを込めて、かたつむりに手を触れる。すると、かたつむりの身体がピカッと光り、私の手の中から消えてしまった。 「これで願いが叶うんだよね?」 私はユウキに確認した。 「そうだよ。信じて待っていて。きっと素敵な未来が待っているはずさ」 ユウキの言葉に胸が熱くなる。私はかたつむりの魔法を信じ、将来の夢に向かって頑張ることを決めた。 それから数年が経ち、私は大学を卒業してから小説家としての活動を始めた。最初は苦労も多かったが、少しずつ作品を書いていくうちに、読者からの評価も上がっていった。 そしてついに、私の願いが叶った瞬間がやってきた。出版社からのオファーが舞い込み、私の小説が書籍として世に出ることになったのだ。 感謝の気持ちでいっぱいになり、私はかたつむりの魔法の力に心から感謝した。 「ありがとう、かたつむり。君のおかげで夢が叶ったんだ」 私はかたつむりに手を伸ばし、再び触れる。しかし、かたつむりの身体には光はなく、ただのかたつむりに戻っていた。 「もう魔法はないのかな…でも、君の魔法は私にとって宝物だよ」 私はかたつむりをそっと地面に戻し、微笑みながら歩き出した。かたつむりの魔法が私を夢の世界へ導いてくれたこと、それは決して忘れられない大切な思い出だった。 「ありがとう、かたつむり。私はいつまでも君の魔法を信じているよ」 風が吹き抜ける中、私は心からの感謝の気持ちをかたつむりに伝えた。そして、新たな夢を追いかけるために歩き出したのだった。