キス過感症。それは一日に一度、キスをすることが必要な病気だ。この病気にかかってしまった少年、花崎瑞希は、毎日彼女の唇に触れることでその症状を抑えていた。 瑞希の彼女は、明るく元気な少女、桜井美月だ。二人は学校で出会い、お互いの心を奪い合った。瑞希は美月の笑顔に癒され、美月は瑞希の優しさに溺れていた。彼らは互いの存在がなくてはならない存在となっていた。 瑞希の病気は、一日一回のキスによって症状を抑えることができるが、ある日、何かの間違いで彼らはキスをしなかった。それにより、瑞希の病気は悪化し、余命一年と宣告されてしまった。 残された一年の時間を大切に過ごそうと、瑞希と美月は様々な思い出作りに励んだ。一緒に映画を観たり、ピクニックに出かけたり、一緒に過ごす時間を大切にした。 瑞希は次第に体力を失っていき、歩くことさえままならなくなった。しかし、彼は美月に心配をかけたくないという思いから、笑顔を絶やすことはなかった。美月も瑞希の傍でいつも微笑み続けた。 季節は移り変わり、花咲く春がやってきた。瑞希は病室の窓から見える桜の木を眺めながら、美月の手を握りしめた。 「美月、ありがとう。君と過ごした時間は本当に幸せだった。」 美月は涙を流しながら微笑み、瑞希の頬にキスをした。 「私も瑞希と過ごした時間は、一生忘れないよ。ありがとう、瑞希。」 その瞬間、瑞希は穏やかな笑顔で息を引き取った。 瑞希の葬儀の日、美月は白い花束を手にして病院に向かった。彼女は瑞希の遺影を見つめながら、涙を流した。 「瑞希、私はずっと君を愛してる。これからもずっと一緒だよ。」 美月は遺影にキスをし、瑞希の傍らに花束を置いた。 彼らの恋は、病気という壁を超えて紡がれたものだった。瑞希はキス過感症という病気に苦しんだが、その病気が彼らの愛を深めるきっかけとなったのだ。 それから数年後、美月は瑞希の思い出を胸に、新たな一歩を踏み出した。彼女は病院で働き、他の患者たちにも笑顔を届けることを決意した。 「瑞希、私は君の笑顔を守るために、一生懸命生きるよ。」 美月は瑞希への想いを胸に、人々の心に優しい風を運んでいった。 彼らの物語は、一つの終わりと同時に新たな始まりでもあった。