ある日、私は友人の招待で高級レストランに訪れた。そのレストランは、一流シェフが手がける美食の宝庫として知られていた。しかし、そのレストランにはある噂が立ちまわっていた。 「あの店で出される料理は、実は人肉を使用しているんだってさ」 友人の話によると、そのレストランのオーナーは、かつて極秘に人肉の調理法を研究していたという。彼は人肉が他の肉とは一線を画す美味しさを持っていると信じて疑わなかった。そして、その秘密の調理法を使い、人肉を料理に取り入れているというのだ。 興味津々でレストランに足を運んだ私たちは、シックな雰囲気漂う店内で席に案内された。テーブルにはシンプルな白い布がかかっており、照明は柔らかく落ちていた。メニューを開いた瞬間、私たちは驚きの連続に見舞われた。 「ヒト肉のステーキ」「人肉のポタージュ」「人肉のパスタ」……。メニューには堂々と「ヒト肉」と記されていた。私は戸惑いながらも、友人と共に勇気を出してそれらの料理を注文した。 最初に運ばれてきたのは、ヒト肉のステーキだった。肉は赤く、ジューシーな香りが漂っていた。切り分けた瞬間、肉は柔らかく口の中でとろけた。その味は、これまで経験したことがないほど深みと旨味に満ちていた。 「これは…まさか、本当に人肉なのか?」 思わず友人に尋ねると、彼はにやりと笑って答えた。 「本物だよ。シェフは人肉の調理法を極めたんだ。人肉はどんな肉よりも濃厚な味わいを持っているんだって」 私は興味津々で次々と運ばれてくる料理を堪能した。人肉のポタージュは濃厚なスープで、人肉のパスタはアルデンテに茹でられた麺と絶妙なソースが絡み合っていた。どの料理も、人肉の特有の風味と相まって、まさに絶品と呼ぶにふさわしいものだった。 しかし、食事が進むにつれ、私は違和感を感じ始めた。食べるたびに、まるで人の肉を噛み砕いているような気がしてならなかった。それでも、美味しさに魅了されていた私は、その感覚を押しのけて食事を続けることにした。 食べ終わった後、私たちは席を立ち、店を出ようとした。しかし、その時、私の視界に一つの光景が飛び込んできた。厨房から漏れる光の中で、シェフが何かを切り刻んでいる様子が見えたのだ。 私は足が止まり、シェフの手元を見つめた。そこには、鮮血まみれの包丁が握られていた。そして、その横には、人間の腕が積まれていた。私は凍りつくような恐怖に襲われ、声も出せずに立ち尽くしてしまった。 友人が私の様子に気づいて駆け寄ってくるが、私は何も言えなかった。その後、私たちはその場を逃げ出し、警察に通報した。調査の結果、そのレストランは人肉を使用していたことが判明し、オーナーとシェフは逮捕された。 その日以来、私は普通の料理を食べることさえもできなくなってしまった。人肉の美味しさの秘密を知ってしまった私には、それ以上の味わいは存在しないのだと感じていた。しかし、一方で、人肉を食べたことへの罪悪感と恐怖が私を苛んでいた。 今でも、あのレストランでの食事の味は忘れられない。それは美味しかったし、確かに人肉の特有の風味があった。しかし、それがどれほど恐ろしいものであるかも、私には痛いほどわかってしまったのだ。