フォロー

短編小説「忘却症」

宮崎翔子は、忘却症という病気に苦しんでいた。この病気は、自分のことを忘れられていくという恐ろしいものであり、翔子自身も次第に周りの人々から存在を忘れ去られていった。 翔子は大人であり、彼女のことを知る人々はもはやこの世には存在しない。友人や家族、恋人たちの記憶も、少しずつ消え去っていく。彼女はまるで存在自体が抹消されてしまったように感じられた。 その絶望の中で、翔子は自分の存在価値について深く悩んだ。もはや誰も彼女のことを覚えていないのなら、自分は本当に存在しているのだろうか。彼女の心は迷いと孤独に満ち溢れ、絶望の淵に立たされていた。 そして、翔子は思い切った決断を下した。もし自分の存在が誰からも忘れ去られるのなら、それならば自分自身も忘れ去られるべきだと。彼女は自殺を選んだのだ。 しかし、翔子の死からしばらくたったある日、彼女の死は研究者たちによって深く分析されることとなった。彼らは彼女の死を通じて、忘却症という病気の存在を知ることになったのだ。 翔子の死が無駄ではなかったという知らせが広まるにつれ、彼女の存在は再び注目を浴びるようになった。彼女の死によって、忘却症の研究は大きく進展し、新たな治療法や予防策が開発されることとなった。 翔子の命が救われることはなかったが、彼女の死は少なくとも他の人々にとって無駄ではなかったのだ。彼女の犠牲が、同じ病気に苦しむ人々の希望となったのだ。 彼女の死後、翔子の名前は忘却症という病気と共に記憶されるようになった。彼女の存在が消え去ったことは悲しい現実だが、それをきっかけに多くの人々によって忘却症の研究が進められるようになったのである。 翔子の存在は忘れ去られたかもしれないが、彼女の死を通じて忘却症という病気への理解が深まり、多くの人々が救われることとなった。彼女は、忘れられることで他の人々の未来を照らす光となったのである。