ボクは白金桃華お嬢様の執事である鮫島勇翔だ。ボクは失礼ながら人の心の声を読むことができる特異体質であり、基本的に彼女の要望に応えていた。 ある日、お嬢様の両親がお屋敷にお見えになり、厳かな面持ちで話し合いが始まった。その場にはお嬢様の自室で、彼女の縁談についての話が進められていた。 「桃華、もう縁談を断り続けるのはやめてくれないか。もはや我々の願いを無視するようなものだ」 お嬢様のお父様が厳しい口調で問い詰めると、彼女はしどろもどろになって答えた。 「でも、父上、私はまだ結婚する気がありません。どんなにお見合いをしても、心が動かないのです」 お嬢様の声には、不安と困惑が交錯しているのがボクにもすぐに分かった。 お嬢様は美しい容姿と高い教養を持ちながら、なぜか縁談を全て断り続けていた。その理由は彼女自身にも分からないまま、ただ心が動かないのだという。 お嬢様の両親は、何度もお見合いをセッティングしてもなかなか縁がつかないことに不満を抱いていた。そして、その不満が募っていた。 「桃華、我々の期待に応えられないのなら、お嬢様の立場をからもう一度考え直していただきたい」 お嬢様のお母様が優しく言葉を掛けると、彼女はうなずきながら涙を浮かべた。 ボクはその場に立ち尽くしていた。お嬢様の両親の気持ちも分かるし、お嬢様の心情も理解している。でも、どうして彼女の心が動かないのか、それにはボクにも答えがなかった。 「お嬢様、もしよろしければ、一緒に考えてみませんか?」 ボクはお嬢様に声をかけた。彼女は驚いたように顔を上げ、ボクの目を見つめた。 「勇翔、あなたにも何かアイデアがあるの?」 彼女の声には少し希望が込められていた。 ボクは思い切って提案をした。 「お嬢様、もし心が動かないのであれば、縁談ではなく、自分自身の心に素直になることはいかがでしょうか?」 お嬢様と向き合いながら、ボクは続けた。 「もしかしたら、お嬢様の心が本当に動く縁談は、お嬢様自身が見つけるものかもしれません。自分の気持ちに素直になり、心の声を聞いてみることはいいのではないでしょうか」 お嬢様はしばらく考え込んだ後、微笑んでボクに向かって言った。 「そうだわ、勇翔。私が自分の気持ちに素直になること、それが大切なのね。ありがとう、勇翔」 お嬢様の笑顔にボクも心が温かくなった。彼女が自分自身の気持ちに向き合うことで、本当の幸せを見つけることができるかもしれない。それがボクの願いだった。 ボクはお嬢様の手を取り、微笑みながら彼女を励ました。 「お嬢様、どんな決断をされても、ボクはお嬢様の味方です。どうぞ、お嬢様の心に従って進んでください」 お嬢様はしばらくボクの手を握りしめていた後、にっこりと微笑んだ。 「ありがとう、勇翔。私は自分の心の声を信じて進んでみるわ」 お嬢様の言葉に胸が熱くなり、ボクは彼女の笑顔を見つめる。 こうして、お嬢様は自分の心に素直になる決断をし、新たな道を歩き始めるのだった。 終わり