ある夏の日、如月淚は高校の教室で机に突っ伏していた。暑さに耐えきれず、長い黒髪が額に張り付き、汗が滴り落ちる。淚は部活の練習が終わってからというもの、いつもこの教室で一人涼んでいた。 「淚先輩、暑くないですか?」 淚の耳元で、ふわりと声が聞こえた。彼は驚いて顔を上げると、宮永海慈が微笑みながらそこに立っていた。 「海慈…君はどうしてここに?」 「淚先輩が暑そうだから、一緒にいればいいかなって思って。」 淚は海慈の言葉に戸惑いながらも、彼の隣に座ることにした。彼らは同じ部活で、一緒に過ごす機会も多かったが、最近海慈が淚に対して特別な感情を抱いていることに気づいていた。 「海慈、俺に何か用でもあるのか?」 淚は少し不安そうに尋ねた。彼はボーイズラブには興味がなく、海慈の好意には戸惑っていた。 「先輩…俺、淚先輩が好きです。だから、一緒にいたいんです。」 海慈は真剣な表情で淚を見つめる。彼の瞳には純粋な思いが宿っている。しかし、淚はその言葉に戸惑いを隠せなかった。 「海慈、君はまだ若いし、将来はまだ広がっていくはずだ。俺に執着する必要はないんだよ。」 淚はやわらかな口調で海慈に伝える。彼の心は揺れ動きながらも、海慈の未来を思いやる気持ちが先に立っていた。 「でも、淚先輩がいなくなったら…俺、どうしたらいいんですか?」 海慈の声には少しの不安が混じっていた。彼は淚の存在が大切で、失うことを恐れていた。 「海慈、君は強い。自分の力で進むことができる。だから、俺に依存せずに前に進んでほしい。」 淚の言葉に海慈はしばらく黙って考え込んだ後、ゆっくりと頷いた。 「分かりました。淚先輩の言う通り、俺も自分の力で進んでみせます。」 淚は海慈の決意に胸を打たれ、彼の頬に優しく微笑む。 「海慈、君ならきっと素晴らしい未来を切り拓くことができる。俺はいつまでも君の味方だから、頑張ってくれ。」 夏の風が二人を包み込む中、淚と海慈は互いの手を握り合った。この瞬間、淚は彼の未来を信じることができた。 終わり