桜は幼い頃から涙を流すことができず、それが彼女の特徴となっていた。友人たちは彼女の病気を「無涙症」と呼び、いつも彼女をジョークのネタにしていた。 しかし、桜はその病気に悩んでいた。友人たちが泣いたり笑ったりする姿を見るたびに、自分は何か欠けているような気持ちになった。自分の感情をうまく表現できないことに悔しさを感じる日々が続いていた。 ある日、桜は春樹という男性とのデートを楽しんでいた。春樹は彼女の無涙症を知っていたが、それを気にすることなく彼女と過ごしてくれた。桜は彼の優しさに心を打たれ、春樹に対して特別な感情を抱いていた。 デートの最後、二人は歩道を横断していた。しかし、交差点で彼女の足がすくんだ瞬間、車が突然現れた。春樹は彼女を庇うために飛び出し、桜は車に轢かれてしまった。 意識が遠のく中、桜は強い痛みと共に初めての涙を流した。彼女の無涙症が治ったのかと思った矢先、彼女は春樹の胸の中に倒れ込んだ。春樹は彼女を抱きしめ、涙の中で彼女の最後の息を引き取った。 その日から、桜の無涙症は彼女と共に消え去った。彼女の死は友人たちにとって大きな衝撃となり、彼らは彼女の墓に涙を流し続けた。 桜の死後、春樹は彼女の思い出を胸に刻みながら生きていった。彼は彼女の無涙症を克服した瞬間に、彼女の本当の感情を知ることができた。彼女が泣けなかったのは、彼女の心がまだ自分に触れられることを望んでいたからだと気づいたのだ。 それから、春樹は涙を流すことができない桜のために、いつも笑顔で彼女を思い出し続けた。彼が彼女に寄り添い、彼女の心の中で涙が溢れることを願っていた。 彼らの物語は短くても、純粋で深い愛に満ちていた。桜が無涙症を克服した瞬間、彼女の心が春樹に触れることができた瞬間、それは二人の永遠の絆として語り継がれるのだった。